【感想】『生まれた時からアルデンテ』平野紗季子|スルスル読める食エッセイ

【感想】『生まれた時からアルデンテ』平野紗季子|スルスル読める食エッセイ

なんとも言えない嫉妬する世界観の本だった。
つまり、最高にステキな本!
2021年上半期で一番影響を受けた。

私は毎週末、代官山蔦屋で本を読むのがルーティン。

いつもはワイン関連の本しか読まないけれど、ブックカバーの写真と『生まれた時からアルデンテ』というタイトルに惹かれて、こちらの本を手に取った。

パラパラっと飛ばし飛ばし読んだだけで、文章、表現、日常生活の目の付け所に面白さと心地よさを感じて、いつの間にかワイン本をそっちのけで読みふけってしまった。

結局、読み終えたけれど(代官山蔦屋はスターバックスのコーヒーを飲みながら、ソファーに座って購入前の本が読み放題)、何回も読みたいと思って購入。

どんな人が書いたの?

平野紗季子さん(美人!)は1991年福岡県生まれ、2014年3月慶応義塾大学法学部卒業。
小学生から食日記を付け続ける生粋のごはん狂(pure foodie)
職業は「フードエッセイスト」と言ったところか。
フジテレビ系『7RULES(セブンルール)』に出演されたことで知名度が上がったよう。

どんな本?

生まれた時からアルデンテな平成の食文化を綴った新しい時代の味覚エッセイガイド。世界一のレストランからロイヤルホスト観察記まで、食を楽しむことへの思いを文章と写真と引用につぐ引用で構成した一冊。小学生時代の赤裸々すぎる日記や、食文化 カタログなど特別収録多数。

【内容例】
小学生の食生活(=少女時代特有の残酷さで各種レストランへの感想を素直に記した直筆文をそのまま掲載)/
戦争を始めるフルーツサンド/beyond the 美味しい/
なぜオニオングラタンスープのこととなるとシェフは調子にのるのか?/
文化経済資本の見せびらかし/冷蔵庫、いつもは真っ暗なんだと思うと寂しい/
ガストロノミーって何ですか?自然と文化の拮抗点ですか?(=レフェルヴェソンス生江シェフとの対談)/
金券ショップの先の、ネクタイ屋の奥の、フルーツの秘境/パンケーキよりはんぺんだ/
血のマカロン事件/なんとか作れてなんとかおいしい感じの料理(=紗季子オリジナルレシピ)/
それでも美しい道路に捨てられたスターバックス/消化こわい/価値観スイッチ食事の場合/
ロイヤルホストのホスってホスピタリティのホスですか?(=3年越しの観察の果てにあった衝撃の結末)/
申し訳程度に出てきたランチサラダ/レストランの穴/食はあらゆる文化的刺激を受けうるメディアなのだ。
(=血肉となってきた本や事象が一目で分かる食カタログ)/ほか

私が好きな話

立ち読み(実際は代官山蔦屋なのでソファーに座っている)で、気に入った話があって、これは何回も読みたいと思って購入するきっかけになったのがロイヤルホストの話。衝撃の結末があって、「あぁ、このロイヤルホストに深夜に行ってみたい」と思った。

これはぜひ読んで欲しい!!!

やっぱり「食」がテーマの本なので美味しそうなお料理やお菓子の(そうじゃないものも)写真がいっぱいで見ているだけでも楽しい。

レストランで、ファミレスで、蕎麦屋で、喫茶店で、料理が出てくるまでの時間に読みたい本だなって思う。

さっそく影響を受ける

著者おススメの本の紹介(血肉となってきた本や事象が一目で分かる食カタログ)もあり、いくつか気になる本があったのでさっそく読んでみた。

たいめいけんの初代店主、茂木心護さんの『洋食や』は面白いし、昭和の激動の時代は知らないけれど当時の日本人の生活や食のしきたりが想像できて、おもわずニヤリとしてしまう。

特に昭和34年にヨーロッパに旅行した際の話が面白い。

巴里(パリ)でギャルソンがお客さまの前で瓶を股の間に挟んでブドー酒(この言い回しも時代を感じて良い)を抜くという、しかもどこのお店でも。

平野紗季子さんは「トースト」の章が人生で一番うれしくなる随筆とのこと。

もう1冊絶対に読もうと思っているのが『おいしさの表現辞典』

文学作品や新聞記事から食表現が約3000例集約された本。
平野さん曰く、YouTubeっぽくびゅんびゅんいろんな人の味をさらっていけるらしい。

今回ご紹介した『生まれた時からアルデンテ』には駄菓子から、ファミレス、ミシュラン星付きレストラン(そのほかいろいろ)まで著者が感じたことが素直に綴られており、感性豊かだなぁ~

食にこんなに感動出来たら日々幸せだよなぁ、とか憧れの気持ちで読んだ次第です。